オールスター

自分が幼稚園から小学生低学年だったころ、日本のプロ野球のオールスターを見るのが大好きだった。オールスターの開催が近づくと、それをテレビで観戦するのが楽しみで仕方なかった。テレビの前に張り付いて応援し、さらには好きな横浜の選手が活躍すると、それを自分のことのように誇りに感じたものだ。
そんな自分に父親が「父さんはオールスターはあまり面白いと思わないな。だって真剣勝負じゃないんだもの」と言ったのを今でも覚えている。当時はそれがどういう意味なのか、さっぱり理解できなかった。オールスターは夢の舞台でしかなかった。
しかし今では父の言っていたことにまったく同感である。オールスターには興味がわかない。真剣勝負ではないといったら選手に失礼かもしれないが、オールスターでは勝負よりも魅せることを優先しているように思える。オールスターでチームの勝利のために送りバントや敬遠をするかといったら、しない。局面局面ではもちろん真剣勝負なのだが、チームの勝利を究極の目標としているかというとそうではない(オールスターの性質上当然ではあるが。)それに、セリーグが勝つかパリーグか勝つかなんて、紅白歌合戦で紅白どっちが勝つかくらい興味がないのである。また今では交流戦があるために、セパ両リーグの対戦がそれほど珍しいことでもなくなってしまった。
もちろん自分の子供のころのように球宴を楽しみにしている子供もいるだろうし、あのお祭り的な雰囲気が好きな人もいるだろうとは思う。
と、ここまで書いてふと思い出したが、友人の家に遊びに行ったときに、その友人がフィギュアスケートエキシビションをすごく楽しみにしていたのを思い出した。僕はそれにすごく違和感を感じた、というのは、僕はフィギュアの本戦を見るのはそれなりに好きだが、エキシビションにはまったく興味がない。というのは真剣勝負じゃないから。
彼と僕の嗜好の違いは、恐らくスポーツの楽しみ方の違いにあるのだと思う。彼は勝負よりむしろ技自体の美しさとか、スポーツの美しさを楽しんでいるのだろう。そういう意味では僕より彼のほうがスポーツの本質を楽しんでいるといえるかもしれない。僕がスポーツに一番求めるのは勝負が生むドラマである。ドラマは真剣勝負からしか生まれない。
そう考えてくると、野球選手のプレーの美しさ自体を楽しむ人にとっては、オールスターはこの上なく面白いコンテンツなのかもしれない。直球勝負に美しさを感じる人もいるだろう。僕は直球勝負よりは、持てる変化球を駆使し、配球を読みあって打者と投手が勝負する、そんなシーンのほうが興味深いと思う。